【完】片手間にキスをしないで
頭にポンと手を置かれ、冷めやらない熱を拵えたまま布団に入る。
これが、カウントダウンを始めて最初のキスだった。
「こんなの……ますます好きになっちゃうよ……」
そう呟いた夜はよく眠れなくて。でも───
「奈央クン、今日も」
「……ん」
2度目、3度目と続くうちに、日を追うごとに、そのキスは淡白になっていった。
「ねぇねぇ、忘れてないよね?」
座椅子に座る彼の袖をクイッ、と引っ張れば、
「……ああ」
仕方ない、と言いたげに顎に指を添えられて、重ねられる薄い唇。
チュッ───
「奈央クン、大好き」
「何度目だよ。聞き飽きた」
たまに不意打ちで仕掛けてみても、表情は決して変わらない。
オウム返しでもいいのに。1度でも『夏杏耶、好きだよ』って、言ってくれたらいいのに。
「もう一回だけ、お願い」
「……今日だけな」
そう願って手を握っても、返されるのは本能の欠片もないキスばかり。