【完】片手間にキスをしないで


散らばった小物を見やった後、呆れたように背を向ける奈央。


訊いてきたのは彼の方なのに。建前だと見抜いたはずなのに、干渉はしてこない。


「……」


相変わらず読めない彼の心に踏み込みたくて、夏杏耶はその袖口を掴んだ。


「……ん、どうした」

「もし、進まなかったら」

「何が?」

「荷造り、進まなかったらさ。私、もう少しここに居られるの……?」


いまさら何を───心の内で自分を卑下しても、喉を伝う言葉は止まらなかった。


「ほらあと座卓。元々私のだから持って行っちゃうよ?」

「……そうだな」

「クッションだって……座椅子の後ろに挟んだらちょうどいいでしょ、アレ。なくなったら奈央クン、困っちゃうんじゃ、」

「夏杏耶」


久しく落とされた、冷たい声。凍てつかせるようなその苛立ちを含んだ視線に、夏杏耶は唇を震わせた。


「や……や、あの、ごめんね、違うの。じょ、だん……冗談だから」

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