【完】片手間にキスをしないで


「全部、無駄になる」

「え?」

「話せばきっと、俺のしてきたことは全部」


空気に溶けてしまいそうなほど、控えめに落とされる声。


「無駄……?」

「解っていたつもりが───覚悟なんて、とっくに緩んでた」


意味は解らないのに、再び向けられる視線が切なくて、下げられる眉が愛おしくて、夏杏耶は無意識に距離を詰めた。


今度は、ダメだと言われなかった。


「奈央クン……」


見つめてそう呟くと、ふっ、と笑みを零した彼が視界から消える。


代わりに訪れたのは、身体を柔く締め付けるぬるい体温。


「え……」

「最初からこうしていれば……泣かせずに済んだのかもな」

「奈央、くん」

「……悪い。今はこっち見るな」

「ん、」


彼の掠れた声と吐息が、耳元を撫でた後。無意識に出た自分の声に、夏杏耶は中心に熱を集めた。


恥ずかしい……真剣に話しているのに、反応してしまうなんて。

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