【完】片手間にキスをしないで





放課後。廊下の窓からは、今日も西日が透けていて。


夏杏耶はチャームポイントの長い髪を、ふわっと後ろに靡かせる。


この時間、オレンジに照らされると、べっこう飴のように煌めく色がお気に入りだ。


でも、それが校内でも目立っていることを、美々の華奢な背に隠れながら悟った。いま悟った。


「ねぇ、美々……隠れてもあんまり意味ない気がしてきた」

「あーまぁ、目立つもんね。カーヤちゃんも私も」


上級生のフロア。廊下の角に身を潜めながら、美々は苦笑する。


恐る恐るあたりを見回すと、案の定上級生の視線が刺さっていた。


「本当に大丈夫かなぁ……」

「へーきへーき。いくら周りが騒ぎ立てたって、あの人は気にも留めないでしょ。友だちもいなさそうだし」

「うん……むしろ奈央クンは、(たか)ってるとこ避けていくかも」


でも、友だちか……。


「でしょう?」と鼻高々に振り向いた美々に頷きながら、夏杏耶は首を捻った。


彼の友だち───そう聞いて詰まる、喉の違和感は何だろう、と。

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