【完】片手間にキスをしないで
◇
放課後。廊下の窓からは、今日も西日が透けていて。
夏杏耶はチャームポイントの長い髪を、ふわっと後ろに靡かせる。
この時間、オレンジに照らされると、べっこう飴のように煌めく色がお気に入りだ。
でも、それが校内でも目立っていることを、美々の華奢な背に隠れながら悟った。いま悟った。
「ねぇ、美々……隠れてもあんまり意味ない気がしてきた」
「あーまぁ、目立つもんね。カーヤちゃんも私も」
上級生のフロア。廊下の角に身を潜めながら、美々は苦笑する。
恐る恐るあたりを見回すと、案の定上級生の視線が刺さっていた。
「本当に大丈夫かなぁ……」
「へーきへーき。いくら周りが騒ぎ立てたって、あの人は気にも留めないでしょ。友だちもいなさそうだし」
「うん……むしろ奈央クンは、集ってるとこ避けていくかも」
でも、友だちか……。
「でしょう?」と鼻高々に振り向いた美々に頷きながら、夏杏耶は首を捻った。
彼の友だち───そう聞いて詰まる、喉の違和感は何だろう、と。