【完】片手間にキスをしないで


「あっ、カーヤちゃん、出てきた!出てきたよ!」

「え、ほんと?」


巡らせたばかりの疑問を晴らせないまま、袖を引く美々とともに追いかける。


遠目に映るのは、逆方向に去っていく奈央の背中。



つまるところ、秘め事を探るために美々が提案したのは、〝ふたりで〟のストーキングだった。



後ろめたい気持ちがないわけじゃない。


美々が一緒とはいえ、彼にバレたら今後の生活にも支障が及ぶ。


そう、頭では分かってはいたのに、止められなかった。ずっと、ずっと、踏み込みたかったから。


「美々……なんで協力してくれるの?」


先導する小さな背中に、訊いてみる。


「うーん……冬原先輩を一匹狼って言っちゃったお詫びもあるけど……なんか、カーヤちゃんが辛そうに見えたから」

「辛そう?」

「違うならいいけどさ。あ、角曲がるよ」


辛そうだなんて、逆だよ美々。


だって私は、今まで以上に奈央クンの傍にいられることになって、すごく幸せだよ。


ただ、傍にいられるだけで。

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