【完】片手間にキスをしないで


作戦がおじゃんだよ?!───


と、言いたげに腕を掴んだ美々は、急に顔を青くする。


どうやら視線は自分の向こうで、夏杏耶はまさか、と後ろへ辿る。


さっきまで微かに漂っていた香りが濃くなったのも、全然、気のせいじゃなかったんだ。


「……何やってんの、お前ら」

「うげ……」


エプロン萌え。


咄嗟にその言葉を呑み込んだのは、前にそびえ立つエプロン姿の彼の表情が、ご立腹を成していたからで。


正面の美々も、おかしな声を出していた。


「な、なななな、なお、クンッ」

「なが多い」

「ごっ、ごめんなさい……」


いや、そうじゃなくて……!


夏杏耶は折り曲げていた足をピンと伸ばし、呆れた様子で腕を組む奈央を見据えた。


うぅ……絶対に不機嫌だけど、睨みつつ見下ろされているけれど、この眼力にたたずまい……うぅ、やっぱりかっこよすぎる。


立てば芍薬なんとやら、という言葉があるけれど、まさに目の前の彼にぴったりだと思った。

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