【完】片手間にキスをしないで


「で。俺をつけまわして覗いてたわけか」


でも、少しだけ撤回。芍薬よりもバラの方が合っているかも。


だって、目の前に咲く微笑はどこか刺々しい。


「つけまわすなんて、そんな……」

「カーヤちゃん。ここは私に任せて」

「えっ、美々?」


パンッ、と埃を払い、いつの間にやら前に出ていた美々。瞬間、小さな背中に〝(おとこ)〟という文字の幻覚が見えた。


「どうも。カーヤちゃんの親友かつアドバイザーの木原美々ですけど」

「……どーも」


さらに狭まる彼の眉幅。向かい合う珍しいツーショットを横目に、夏杏耶は首を捻った。


親友はともかく……アドバイザーっていつ就任させたんだっけ。


「先輩、カーヤちゃんのこと不安にさせてるって、分かってないでしょ」


しかもタメ口……。怖いもの知らずって本当に恐ろしい。


彼女はハーフツインを靡かせながら、扉の開いた調理室を指差した。

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