【完】片手間にキスをしないで
「この中。いますよね?女」
「は?」
「カーヤちゃん、気付いてたんです。先輩が自分の知らないところで、女の人と会ってること。だからここまで連れて来たんです。ちゃんと確かめようって」
よくもまあ、スラスラと……。
夏杏耶は口を結んだまま感心していた。
危うく口を挟めば、ほんの少し真実を混ぜた〝言い訳〟に、不純物を与えてしまいそうだったから。
それに……美々の言う存在のせいで、思考は半分調理室に傾いていたから。
「別に……誰と何してようが、勝手だろ」
「ふーん。つまり、何かしてたってことですね。ここで」
「……うるせぇ」
「あーもう。ほんっと、煮え切らない男って私きらーい」
「はぁ?」
2人の間に火花が散る。
「ちょっと美々……っ」と割って入ったときにはすでに、彼はこめかみに青筋を走らせていて。
「外が騒がしいと思ったら……何やってるの?あなたたち」
調理室から出てきた、ほっそりとしたシルエットを前に、一層顔を歪ませた。