【完】片手間にキスをしないで
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花───ああ、そうそう。そんな謳い文句だったっけ。
あまりにもしっくりくるので、自然と全文が脳裏に浮かんだ。
彼と同じくエプロンを纏った、百田先生に向けて。
「もしかして、匂いにつられてきちゃったのかな?えっとぉ……1年生?」
担当教科、家庭科。とはいえ、彼女には割烹着より、サーモンピンクのエプロンがよく似合う。
そう、実際に着ているような。
豊満な胸と、顎元に添えられた細長い指に、夏杏耶は「ほう……」としばらく見惚れていた。
なるほど……美々が感じていた女の気配って、先生のことだったんだ……。
女子は女子でも、グラマラス女子だ。
「2年1組の泉沢夏杏耶と、こっちは木原美々です」
「あれっ、2年生? 私てっきり、新入生が覗きに来たのかと思っちゃった」
「新入生?」
「ほら、今ってちょうど、仮入部の期間でしょう?」