【完】片手間にキスをしないで


窄まった唇が、艶っぽく光を反射する。


グロスの気配はないのに、どうしてこうも色気が漂うのか……。


20代前半と聞いていたけど、私も数年後にはこうなれるのかな。


……否、いまのままでは想像もつかない。


夏杏耶はきれいにカールする内巻きボブへ、妙に濁った感覚を覚えた。


「入部って、まさか調理部?」


その感覚の正体に首を捻っている間、美々が問う。


「も~、『調理部ですか?』でしょう?でもね、残念。まだ規模は部まで行かないのよ」

「規模?……ああ、確か部活って、部員6人いなきゃいけないんだっけ」

「そうそう。だからね、今はまだ同好会みたいなものなの。申請はまだしてないんだけどね?」


百田の視線が奈央へ移る。彼はふいっ、とそれを逸らして俯いた。


なんだろう……この、内側から押し寄せる心地悪さは。

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