【完】片手間にキスをしないで
「え、じゃあそれって何?マンツーマンで、何やってたんですか?」
美々が放った瞬間。ドクンッ、と脈が血管を弾いた。
振り返った親友が「まずった……」と言いたげに口を覆ったので、よっぽどひどい表情をしていたんだと思う。
だから、ようやく気が付いた。……私、先生に嫉妬しているんだ、って。
「何って、一緒にスイーツづくりしてただけよ?」
「「えっ?」」
「ねぇ? 冬原くん」
名付けてしまうと不思議。
小首を傾げる仕草にも、彼へ向けられる潤った瞳にも、途端に嫌気が刺してしまうのだから。
ただ、いまはそれよりも───
「す、いーつ……? え、奈央クンが?」
夏杏耶は美々とともに、薄暗い空気を纏った彼に視線をやる。
瞬間、バニラエッセンスだとはっきり解るほど甘美な香りが、廊下までツン、と突き抜けた。