身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「顔色が悪いけど、まだ体調が戻らないのか?」

「あ、あの、大丈夫です。……単なる寝不足でぼーっとしがちで……心配はいりません」
 
凛音は表情を取り繕い胸の前で手を横に振る。

まさかここで柊吾との関係を社長に知られるわけにはいかないのだ。

この場を切り抜けるために咄嗟に寝不足だと口にしたが、それも嘘ではない。

「ちゃんと食べてゆっくり寝れば大丈夫です。ご心配をおかけしてすみません」

「なにか寝不足になるほどの悩みがあるのか?」
 
同情的な柊吾の声に、凛音は頭を横に振る。

「寝不足の原因は、プライベートでいろいろ……あ、あの、大丈夫です。仕事に影響するようなことはありません」

適当な理由が思い浮かばず、凛音はそう言って話を打ち切り頭を下げた。

三十代という若さで社長に就任するほど優秀な瑞生のことだ、なにもかもが見透かされそうでひやひやする。

「ご心配をおかけしてすみません」
 
そう言って顔を上げたとき、それまで治まっていた目眩を感じて視界がぐらりと揺れる。

同時に喉元になにかがせりあがりとっさに口もとを両手で押さえしゃがみこんだ。

「おい、大丈夫か?」

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