身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
医務室があるフロアでエレベーターを降りた後も、柊吾は相変わらず凛音を抱き上げたままだ。

いつ誰に見られるのかわからず、凛音は辺りを気にしながら柊吾の胸に顔を埋めている。

恥ずかしくて全身が熱くてたまらない。

今医務室で検温すると、高熱で即帰宅命令が出されそうだ。

「昼食はちゃんと食べたのか?」
 
柊吾の問いに、凛音はもぞもぞと顔を上げる。

「……食べました」
 
そう言いつつも視線を泳がせる凛音を、柊吾は厳しい目で見つめる。

どうやら嘘だと見抜かれているらしい。

昼食なら一応食べたが、食欲がなくデスクでゼリーをひとつ食べただけだ。

柊吾は小さく息を吐き、凛音の耳元にささやいた。

「夜はちゃんと食べるまで俺が見張っていてやる」

「見張るって……」

「そうだな、今日は凛音が好きなだし巻きと稲荷寿司を買って帰る。それなら食べられるだろ」
 
柊吾は小声でそう告げると、凛音の額にそっと口づけた。

小さな音が響き、凛音は照れくささに頬を染め身をすくめた。

「は……はい。それなら食べられそうです……」
 
どちらも凛音の好物で、自分でもよく作っている。




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