身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「これは俺が好きなおすましの匂いだな。ありがとう。だけど無理しなくてもよかったんだぞ」
 
柊吾はいくつものショップバッグを手に帰宅した後、ゆったりとしたベージュのシャツとジーンズに着替え、キッチンに顔を出した。

スーツ姿の柊吾はもちろん素敵だが、力が抜けた感満載の普段着姿は格別だ。

テーブルをセッティングしていた手を休め、凛音はその色気のある佇まいをぼーっと見つめた。

「鰹だしの匂いって食欲の源だな」

柊吾は広がる出汁の匂いに目を細めている。

「いなり寿司に合うかと思って。柊吾さんも好きだし」

「ああ、大好物だ。凛音の料理はどれもうまいが和食は絶品だからな」

「絶品なんて大げさです。単なるお吸い物なのに」

照れたように笑う凛音を見つめ、柊吾はホッとしたように笑みを浮かべた。

「体調がよくなったようでよかった。タクシーを見送った後も心配で、俺も一緒に帰ればよかったと後悔してたんだ」

柊吾は決して冗談ではないという引き締まった表情を浮かべた。

午後から来客の予定があった柊吾は凛音をひとりで帰らせたのだが、どうやらそれをひどく後悔しているようだ。


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