身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
けれどその一方でめいっぱいの優しさを見せる柊吾を知っているだけに、割り切れない思いが溢れせめぎ合っている。

「凛音があの物件をそこまで気に入っているなら、すぐにでも――」

「あ、そういえば、もうひとつお気に入りの作品があるんです。それも載ってるはず」

これ以上美術館の話を続けたくなくて、凛音は柊吾の言葉を遮り改めて写真集のページをめくり始めた。

柊吾が戸惑っているが、気づかない振りで笑顔を作る。

「ありましたよ。これです。海岸沿いに建つホテル。青い海と白い砂浜に映えるライトグリーンの外壁が印象的ですよね」

勢いよく写真集を広げ、柊吾の目の前に掲げて見せる。

写真集で凛音の顔は柊吾から見えなくなり、その瞬間凛音は泣きそうな表情を浮かべた。

体調は回復し、柊吾とおいしい食事を楽しんでいた。

過保護なまでに凛音を気にかける柊吾が愛しく、ついさっきまではこの幸せな時間に心弾ませていた。 

なのにどうだろう、あっという間に失意のどん底……というのは大げさだが、凛音はふたりの間にある壁を思い知らされひどく動揺し、うまくやり過ごせない。




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