身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「柊吾さん……」

柊吾の顔が今すぐ見たくてたまらない。

気持ちが完全に浮上したわけではないが、今はなによりもまず柊吾の顔が見たい。

凛音はそっと顔を上げた。 

「……ごめんなさい」

目は真っ赤で泣いていたとすぐにわかる。

それでもぎこちない笑みを浮かべる凛音の姿に、柊吾はみるみる顔をしかめた。

「おい、やっぱり泣いていたんだよな。まさか瑞生から無理な仕事を押しつけられたとか、あ、あの秘書課長から言い寄られたのか? あの男、いつも凛音に特別優しいから気になってたんだ。そうなのか? だったら俺がなんとかするから言ってみろ」

凛音の顔をまっすぐ見つめ、柊吾は怒りを含んだ声をあげる。つい今まで穏やかに凛音を見守っていた姿とはまるで別人だ。

その落差に驚いていると、柊吾は我に返ったように肩をすくめ口元を緩めた。

「悪い。驚いたか? だけど俺はいつでも凛音の味方だから」

ふっと肩の力を抜いた柊吾は、膝の上に置いた凛音を慎重に抱き直し再び胸に押しつけた。

ようやく顔を上げたばかりだというのにまた逆戻り。

今度は凛音の方が混乱する。

「凛音……」

柊吾の腕に力がこもる。



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