身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「こうしてると、凛音がいつまでも俺の側にいるようで、安心する」

柊吾は凛音の髪に顔を埋め、想いを吐き出すようにそう口にする。

いつまでも柊吾の側にいたいのは凛音の方で、柊吾がそんな言葉を口にするのはおかしい。

けれど嘘だは思えない重みのある声音に、凛音の鼓動は高鳴った。

「俺がこの先どうなっても凛音はずっと……いや、絶対にそうする。凛音の居場所は俺の腕の中だ」
「えっ」
 
凛音はハッと息を詰め、全身を強ばらせた。

柊吾の言葉を頭の中で何度も繰り返す。

すっと血の気が引いた顔を隠すように柊吾の胸に埋め、凛音はやはりそうなのだとぎゅっと目を閉じた。

この先どうなっても……柊吾がつぶやいたその言葉が凛音の心に重くのしかかる。

固さが混じる声音からは柊吾の覚悟が聞き取れ、やはり柊吾は見合い相手と結婚しても凛音と別れるつもりはないのだと察した。

「うっ…」

再び涙がこぼれそうになり、凛音は慌てて指先で拭う。

柊吾を困らせたくない。

こんなときにまで柊吾を気にかける自分に、凛音はどこまで柊吾が好きなのだとおかしくなる。

客観的に考えれば、柊吾の望みは身勝手なわがままだ。



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