身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「ひっ、史緖……」

いらだちを隠さない声で直球で問いかける史緖に凛音は頭を抱えた。

気持ちが高ぶった史緖はなにを言い出すかわからないのだ。

『そうね』

スマホから聞こえる小高香波の声に、凛音はピクリと体を震わせ息を止めた。

『今夜しか時間が取れないから約束はしていたわよ。柊吾さんも忙しいみたいだし。実はね、明日柊吾さんのお父様にご挨拶するから、今からその打ち合わせをするの。結婚を考えているから気に入ってもらわないと困るでしょ』

「け、結婚?」
 
それまで身を小さくしこわごわと小高香波の声に耳を傾けていた凛音は、呆然とつぶやいた。

「それに、お父様って……」

よほど柊吾の父に会えるのがうれしいのか興奮気味に話し続ける小高香波の声を遠くに聞きながら、凛音は意識がぼんやりしていくのを感じた。

自分の親に紹介するほど柊吾は小高香波を気に入っているのだ。

そこまでふたりの関係が進んでいると知り、凛音は自分との差にひどくショックを受けた。

自分はといえば、父親に紹介されるどころか柊吾の口から家族の話を聞いたこともない。

家族に限らず柊吾のことをなにも知らないのだ。



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