身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
トクトクと鼓動は速く、胸の辺りになにかが貼りついたように重いまま。

それに結婚すると言っていた小高香波の弾む声が何度も頭の中で繰り返される。

「凛音、気分はどう? 炭酸水でも持ってこようか?」

凛音の傍らに膝をついた史緖が、心配そうに声をかける。

「あ、史緖、もう十時を回ってる。私はこうしてると平気だから遠慮なく帰ってね。……今日は色々とごめん。でも来てくれて本当に助かった」
 
史緖の家には犬が二匹いて、お腹を空かせて史緖の帰りを待っているはずなのだ。

ここまで引き留めたうえに小高香波との電話まで引き受けてもらい、申し訳ない。

「本当に助かった。私ひとりじゃどうしてたか……」

「だめだめ。今の弱り切った凛音を置いて帰れないよ。今日はここに泊まる」

史緖はとんでもないというように頭を横に振る。

「私なら心配いらないって。柊吾さんのお見合いのことなら前から知ってて覚悟はできてたから」

「覚悟なんて軽々しく口にしないの。赤ちゃんがいるのにどうするの」

凛音の手を握る史緖は今にも泣き出しそうで、社内でもクールな美人だと評判の顔が台無しだ。

凛音は小さく噴き出した。




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