身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
唯一の救いは相手の男性が柊吾だとばれていないことだ。やはり後ろ姿だけでの特定は難しいようだ。

ただ、柊吾との毎晩の電話でその件が話題に上ることはなく、それどころか柊吾は凛音の体調を心配し、甘すぎる言葉ばかりを口にしてからかい、喜んでいる。

他の女性との結婚が決まっている男性がそんな子どもじみた真似をするとは思えず、あの写真も見合いもなにかの間違いではないかとふと脳裏をよぎったりもする。 

一方ではそんな自分に都合のいいことがあるわけないともわかっていて、どう折り合いをつけていいのかわからない。

凛音は自分と柊吾の未来は同じ場所にあるのか、悩み続けている。

瑞生の北海道視察を来週に控えた金曜日の午後、ちょうど全員出払っていて凛音ひとりが秘書課で郵便物の仕分けをしていた。

宛名ごとにまとめた後、瑞生宛の束を手に社長室に向かった。

秘書課と社長室は内扉でつながっていて、とくに事情がない場合いつも開放されている。

「失礼します」

凛音は入口に置かれている木目調のパーティションから顔を出して奥を窺った。

「だからしばらくおとなしくしてろってあれほど言っただろ」




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