身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「……そう。いや、美潮じゃない。秘書の岡崎さんが妊娠中でね、苑花のところで気分転換でもと思って。あ、大丈夫なんだな? わかった、だったらこれから向かわせるからよろしく」

柊吾は簡潔に話をまとめて電話を切ると、凛音に満足げな笑顔を向けた。

「うちの運転手に送らせるから、今から行っておいで」

「行っておいでってあの……でも、仕事がまだ……」

ことの成り行きを見ていた凛音は、展開の速さに呆然としている。

突然美容院に行けと言われても、仕事も残っていておまけに体調も悪い。

今も吐き気と目眩が残る体は絶不調だ。

なにより柊吾が結婚するらしいと知り、美容院に行く気分ではない。

「岡崎さんのことだから、仕事は前倒しで終わらせてるはずだろ? お腹が大きくなってきたら美容院に行くのも億劫だって妻も言ってたし、行けるときに行っておいで」

「で、でも……」

凛音はそれはやはり無理だと食い下がるが、瑞生は再びスマホで誰かに電話をかけている。

「あ、島田さん?」

島田というのは瑞生専属の運転手だ。

瑞生は凛音の視線に気づきにっこりと笑う。凛音は悪い予感がした。




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