身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
凛音も柊吾もイタリア料理には目がなくて普段から連れだってよく訪れている。

「家庭料理がうまい店らしい」

「いいですね。……あ、そのお店は誰かのおすすめかなにかですか?」
 
店について知っていそうな柊吾の口ぶりに、凛音はふと問いかけた。

「え。あ、ああ……いや。とくにそういうわけじゃないんだ。ただ、この間雑誌に載っていて覚えていただけだ」
 
柊吾は一瞬チラリと凛音に視線を向け、口早に答える。

まごつくような声音が引っかかり、凛音は首をかしげた。

柊吾は視界の端にそんな凛音の様子を捉えたのか、表情を整え言葉を続けた。

「とにかく評判の店だからしっかり食べて、体力をつけてくれ。寝不足くらいで俺から離れるなんて論外だ」

「ろ、論外……」

「ああ。勝手に自宅に戻るならそのたびに連れ戻しに行くからな」

「そ、それは……いえ、あの、了解です……」
 
柊吾のきっぱりとした言葉に凛音は口ごもる。

そしてまるで自分は柊吾に求められているような錯覚を覚え、頬を染めてうつむいた。
 


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