身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「大げさですね……私の体調が気になるなら、とにかく睡眠時間の確保に協力してください。……あ、もうすぐ着きますね。やっぱり車だと早い」
 
車窓を流れる景色は見慣れたものに変わっていた。

あと少しで会社に着く。凛音は手前で降ろしてもらおうと、柊吾に視線を向けた。

「この辺りでいい――」

「無理。会社の地下駐車場に直行だ」
 
凛音の言葉を、柊吾はあっさり遮った。

「そんな、でも……」
 
もしも柊吾の車で出勤しているのを見られたら、あっという間に噂が広まり従業員たちから冷たい視線が向けられるだろう。

業務にも支障が出るかもしれない。

だから凛音はこれまで柊吾との関係が周囲にばれないよう注意を払ってきた。

「あの、やっぱり柊吾さん、私はこの辺りで」

「今更遅い。次の交差点を越えたらすぐに会社だ」
 
顔を上げると、柊吾の言葉通り社屋が目に入る。

ランドマークと呼ばれるだけあって、遠目でもその大きさが一目でわかる。

次第に近づく立派な建物を見つめながら、凛音は諦めるしかないと覚悟を決めた。



 


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