百怪談
客はいないのに、わりと広い旅館でした。



私たちは宿泊客がいないことを知っていたので、まるで子供が知らない場所を探索するように、旅館の部屋を一つずつ見て回ったのです。



そんな遊びのような時間を二人で楽しんでいるうちに、私たちは旅館の廊下の行き止まりにある最後の部屋に来ていました。



私たちの幽霊探しはそこで終わりだったのですが、その部屋の入口にだけ『立ち入り禁止』の貼り紙がしてあったのです。



でも、『立ち入り禁止』という貼り紙がされていると、逆にその中へと入りたくなってしまうものです。



私と智則は最後の思い出の旅行ということもあり、その立ち入り禁止の部屋のドアをそっと開けて、部屋の中へと入っていったのです。
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