カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「それは奇遇ですね」
「本当に、驚いたよ。でも前に咲ちゃんの写真見せてもらって俺、感動しちゃったくらいだから咲ちゃんがいるって聞いてテンション上がっちゃった。月城が怖い目で睨んでくるんだけどさ」
最後の部分をコソッと聞こえないようにして言う武地さんの姿を想像してクスッと笑う。
「あ、でも撮影するのは私ではないです。雪乃さんというめちゃくちゃ腕のいいフォトグラファーが担当してくれますよ」
「なんだ、咲ちゃんじゃないのか。残念。じゃあ息子の5歳になった時の撮影は咲ちゃんにお願いしようかな」
「喜んで」
明るく答えると武地さんは電話越しに笑った。
「ていうかまた月城が睨んでる。もう、そんな嫉妬深いと嫌われるぞ!」
「うるさい。それより用が済んだなら返せ」
ふたりのやり取りが微笑ましい。
過去を聞いていた分、余計に。
「咲ちゃんも大変だね。相談ならいつでものるからね。じゃ、七五三の時、会えるの楽しみにしてるね」
「私も、お会いできるのを楽しみにしています。綾音さんにもよろしくお伝えください」
「綾音も会えるの楽しみにしてるって言ってたから喜ぶよ…って、まだ話してるんだけど?!」
武地さんの声が遠のいた。
そして電話口から月城さんの声が鮮明に聞こえる。
「早く休みたいだろうに話が長くて悪かった。ゆっくり体休めて」
武地さんを睨んでいたのは嫉妬ではなかった。
私の体を気遣ってくれる優しさに言葉が溢れる。
「月城さん」
「ん?」
「大好きです」
「ありがとう。でもそれは今度直接聞かせて」
直接は恥ずかしいからなかなか言えないのだけど。
「頑張ります」
前向きに明るく告げて通話を切った。