カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「片付けは私が」
言うと月城さんは私が洗い物をしている間に食後のコーヒーを淹れてくれた。
「豆から挽くんですね」
「俺のささやかなこだわりだよ」
知らなかった。
というよりまだまだ知らないことはたくさんある。
「んー、いい香り」
片付けを終えてソファーに並んで挽きたてのコーヒーをいただきながら月城さんに色々と質問してみることにした。
「好きな食べ物は?苦手なものは?」
「どんな学生だったんですか?」
「家族構成は」
「どうして今の仕事を選んだのですか?」
月城さんはどの問いにも丁寧かつ簡潔に答えてくれた。
「好きな食べ物はごはん。絵を描くのが苦手」
「運動も勉強も比較的できた方。恋愛の類いに巻き込まれることが多くて辟易していた」
「両親と姉がいる。姉は農業がしたいと言って北海道の農家に嫁いでいる」
「経営学を学んでいるうちに起業に興味出てやってみたら面白かったから」
やっぱり知らないことだらけだった。
「咲は?」
聞かれて、好きな食べ物はミートソース。苦手なものは虫。
母子家庭で育ち、高校からバイトを始め、目立つことのない学生生活を送っていた。
仕事は何十社と受けた中で初めて内定をもらった会社だったから就職を決めたと答えた。