カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

「うん、私。元気だよ。お義父さんは?うん、うん。それならよかった。それでね」

月城さんの方を見て話を切り出す。

「この前、恋人が出来たって話ししたでしょう?その人がね、お母さんに挨拶したいって言ってるんだけど」

代わって、という母のテンション高い声に余計なことは言わないでほしいと願いながらスマートフォンを月城さんに渡すとかれこれ10分くらい、話していた。

「お母さん?」

月城さんから代わると母は「いい人ね。安心したわ」とだけ言って通話を切った。

「よく喋る母ですみません」

隣で聞いていても月城さんはほとんど頷くだけだった。
時折り笑い声が出ていたのがせめてもの救いだけど。

「娘想いの素敵なお母さんだな。大事に育てられたんだって知れて、余計に俺も咲を大事にしたいと思ったよ」

月城さんはそう言うと私の体を抱き寄せた。

「次は結婚の挨拶しないと」
「そうですね、結婚…って、えぇ?!」

驚いて体を離すと月城さんは真面目な顔で言った。

「俺はそのつもりで咲と付き合ってるから」
「嬉しいですけど…本当に私でいいんですか?」

付き合って間もないし、転職して落ち着いてもいない。

「咲は嫌?」

そんなことないと思いっきり首を横に振る。


「隣にいていいならいつまでも一緒にいたいです」
「俺もこの先も一緒にいるなら咲がいいんだ。でも今じゃないよな。咲の生活が落ち着いたら。また正式にプロポーズするよ」

そんな嬉しいこと言われたら今すぐにでも飛び込んでいきたくなる。
でも今だって月城さんとすれ違いの生活だ。
結婚してもきっと同じだろう。

『結婚とか今後のことを考えるとやっぱり安定した給料をもらえる今の会社にいて、余裕のある時に撮影する方が俺にとってはベストなんだ』

ふと服部くんが言っていた台詞が頭に浮かんだ。
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