カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

「素敵な方と巡り会えて公私共によかったですね」

月城さんに言うと「知っているのか」と言わんばかりに少し驚いた表情を見せてからお礼の言葉を寄越した。

「きみのおかげだ。本当にお願いしてよかった」

月城さんが私に頭を下げるのは奏音さんがどのお見合い相手を選んだとしても会社にとって有益であったから。

月城さんが当社に来たのは、当社の経営を立て直すためであり、お見合いも、奏音さんからの申し出は願ったり叶ったりのベストなタイミングだった。

「謝礼は弾む」
「いえ」

私も当社の一社員。
役に立てたのならそれは当然のこと。
印刷代が発生したわけでもないし。
奏音さんという素敵な女性と知り合うことが出来て、写真もたくさん撮らせてもらえて、幸せな報告を聞けて、お役に立てて。

「こちらがお礼をしたいくらいです」
「それはおかしな話だろう」

月城さんはそう言うと机から封筒を出してきた。

「これでは少ないかもしれないが」
「あ、いえ!本当に受け取れません!これは私のポリシーなんで!!」

全力で断り、誤魔化すように腕時計に目を向ける。

「あらー、たいへん!もうこんなじかんですー。しゃちょうにおこられちゃうー」

棒読みと分かっていながらわざと大げさに言って見せる。

「怒られるのは嫌なので!わたくし、これにて失礼いたします。では!」

頭を下げてそそくさと退室。

ドアを閉めた時、中から短い笑い声が聞こえたような気がしたけど、聞かなかったことにして急いで仕事に戻った。
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