カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

翌朝、月城さんがシャワーを浴びている間にキッチンを借りて簡単に朝食を用意した。

「料理、うまいじゃないか」

褒めてもらえて朝から幸せな気分に浸る。
でも今日は月曜日。
月城さんは仕事だ。
私も帰り支度をしないと、と慌ただしく後片付けをしているとスーツに身を包んだ月城さんが鍵を渡してくれた。

「合鍵作っておいたんだ。いつでもおいで。それと俺は先に出るけどゆっくりしていてもらっていいから」
「わぁ!嬉しい!ありがとうございます」

両手で大事に包むように受け取ると月城さんも嬉しそうに微笑んでくれた。

「いってらっしゃい」
「いってきます」

チュッと軽いキスまで交わして、胸がほかほか暖かくなる
未来の姿まで見えた気がした。

「さて、と」

食器の片付け、シャワールームの掃除を終わらせる。
それから帰ろうかな、と思い室内を見回した時、本棚に目が留まった。

「難しい本が多いな〜」

そういえば経営学を学んでいた、と言っていたっけ。
どんな内容なのか、気になって一冊取り出す。
すると一枚の写真が手元から落ちた。

「なんだろう」

手に取り、裏返すとそこに映っていたのは綾音さんだった。

「なに、この写真」

見た瞬間、胸がドキッとした。
学生服を着た綾音さんが満開の桜と菜の花の中、カメラに向かって満面の笑みで振り返っている。

撮るのが下手だと言っていたけど、そんなことはない。
花と綾音さんの全身のバランスが最適で、背景のぼかしも光の加減も抜群だ。
綾音さんの笑顔も自然体なんだけど愛おしさに溢れていて、最高の表情をしている。

「こんな写真が撮れるなんて」

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