カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
これが仕事なのだし、辞令は絶対。
撮影できないのは残念だけど陰口なんて月城さんとのプライベートな交流がないと分かればそのうちなくなると自分を納得させる。

「会議の準備をして来ます」

軽く頭を下げてから部屋を出ようとドアへと向かう。
すると。

「待て」

月城さんに止められた。

「なにか不満があるのなら聞こう」

ちゃんと聞いてはくれていたようだ。

「不満はないです。ただ」

それにしても言いにくい。
ただ自分で話しを振っておきながら言い淀むのも変だと、グッと拳を握り締めて月城さんに話す。

「私よりも優秀な方はたくさんいらっしゃいます。月城さんの秘書になりたいと言っている方も」
「なるほど。仕事量と人間関係か」

月城さんは言わずとも理解を示してくれた。

「たしかに、きみの力量を知りたいがばかりに無理をさせてしまったな。そこは今後善処する」

ありがたいけど質問の答えではないとジッと黙って待つと、月城さんは私から視線を外した。

「俺はきみを高く評価している。叔父の元においておくのはもったいない。それに」
「それに?」

急かすように復唱すると月城さんは私を一瞥した後、背を向けた。

「それより」

完全に話題を変えられてしまった。
月城さんは自席に戻り、スマホを操作し始めたのだ。

「来週土曜の夜、知り合いのレストランがオープンする。それに同行してほしい。奏音も知ってる人だから奏音も来るだろう」

仕事量は善処すると言ったばかりなのに、休日も仕事だなんて。

「わかりました」

断れない自分の立場がやるせない。

月城さんには聞こえないくらいの小さなため息を吐き、スケジュールに新しい予定を書き入れ、会議の準備へと向かう。
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