カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「ダメだ。きちんと話さないと俺の気が収まらない」
何の話をしているのか。
酔っておかしなことを口走っているだけなのか。
混乱する私をよそに手を引かれるままマンションのエントランスに入るとその広さに驚いた。
「ここに住んでいるんですか?!」
タワーマンションと呼ばれる類の建物内に足を踏み入れるのは初めてだった。
コンシェルジュがいるし、ロビーはホテル並みに広いし、エレベーターも広い。
「どうぞ」
部屋に入ってまた驚いた。
大きな窓ガラスからは街並みが見下ろせ、一人で住むには広過ぎるリビングには大画面のテレビに高級感あふれる家具が並んでいる。
「経営難なのにこんなところに住んで、って幻滅したか?」
月城さんに言われて首を横に振る。
利益は今も回復傾向にあり、このままなら黒字で終わると税理士、会計士が試算していた。
それに元々月城さんは輸入業で成功を収めた若手実業家だ。
「幻滅なんてしません。ただ」
「ただ?」
「ここ、本当に一人で暮らしているんですか?」
広さ云々別にして、部屋は掃除が行き届き、綺麗に片付いている。
「女の影があると?」
「そうなんですか?」
聞き返すと月城さんはおかしそうに笑った。
「そんな訳ないよ。俺は咲に夢中なんだ。服部のことを好きだったって、その答えが返ってくるであろうことを頭で分かっていながら聞いたのに、大人気なくイラついて合意もなしに連れて来てしまうくらいに」
月城さんはそう言いながら私の頬に手を当てた。
「きみのことになるとどうしても不安になってしまうんだ。服部と話すきみは俺と一緒にいる時と違うから」
たしかに服部くんと話す時と月城さんと話す時では全然違う。
でもそれは恋をしているから。
服部くんと話すように肩肘張らない関係が理想だったけど、月城さんと一緒にいる時のドキドキやトキメキは心地いい。
だからこそ、不安で切なく揺れる月城さんの瞳を見て、それが見ていられなくて、月城さんの頬に手を伸ばした。
「月城さん」
呼ぶと少しだけ首が傾いだ。