身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「ただいま」
成さんが帰宅してきた。時計を見れば、もうすぐ十一時になりそうなところ。
「おかえりなさい。食事用意しておくので、よければ先にお風呂に」
「いいの? ありがとう」
成さんは疲れて帰ってきても、不機嫌な態度を取らない。
いつも変わらず笑顔を見せて、感謝の言葉も忘れずにいてくれる。
そんな彼だから、私も多少時間が遅くても帰りを待って、なにかしてあげたいなと自然に思える。
その後、成さんは食事を終えてすぐダイニングテーブルでノートパソコンを開いた。
「ごめん。少しだけ仕事があるから、先に休んでて」
キッチンで明日の朝食の準備をしていた私は、「はい」と答えたものの、なんとなく先に寝る気になれなかった。
ふと、今日の友廣さんとの会話思い出す。
「自宅でまでお仕事するの大変ですね。差し支えない範囲でいいんですが、今はどんなお仕事をされてるんですか?」
「うーん。そうだなあ。今はコンサルティングのような業務かな。お客様へ現状の問題の改善点とか提案したり」
私はキッチンを出て、成さんの向かいの席に静かに座る。
「へえ。それって、もちろん一社や二社じゃないですもんね。時間がいくらあっても足りなそうな……」
前に成さんは部署を代表する立場だと聞いた。だとすれば、やっぱり仕事も多岐に渡って量も多そうだもの。
成さんは指を動かしながら答える。
「確かに大変だけど、こうして信頼を築き上げていくのが一番だから。まあ、昔営業担当していた時とか、結局経過よりも結果を重視されて辛酸を嘗めたものだよ」
成さんにも、そういう時期があったんだ。勝手に生まれながらのエリートで失敗もしないイメージを作り上げていた。
なにもせずに今があるわけじゃないよね。彼も努力してここまできたんだ。
そう思うと余計に、彼が漏らした苦々しい過去が自分のことのように悔しくなる。
「結果が大事なのはわかります……でも、私はそこまでの経過も大切にしたいな」
だって、当時にうまくいかなくても、その経緯があって現在に繋がってるはず。
私がぽつりと零した言葉に、成さんは苦笑交じりに言った。
「梓みたいな人ばかりならいいんだけどね」
「じゃあ、家では私が成さんのこと見てますから」
私の理想論だとわかってる。
それでも、私には金融機関の世界は理解できなくたって、成さんという人に寄り添うことはできると思うから。
「頑張ってるところ、ちゃんと見てます」
そういう人がひとり近くにいたっていいじゃない。
私が図々しくもそう宣言すると、成さんは眉尻を下げて笑っていた。
成さんが帰宅してきた。時計を見れば、もうすぐ十一時になりそうなところ。
「おかえりなさい。食事用意しておくので、よければ先にお風呂に」
「いいの? ありがとう」
成さんは疲れて帰ってきても、不機嫌な態度を取らない。
いつも変わらず笑顔を見せて、感謝の言葉も忘れずにいてくれる。
そんな彼だから、私も多少時間が遅くても帰りを待って、なにかしてあげたいなと自然に思える。
その後、成さんは食事を終えてすぐダイニングテーブルでノートパソコンを開いた。
「ごめん。少しだけ仕事があるから、先に休んでて」
キッチンで明日の朝食の準備をしていた私は、「はい」と答えたものの、なんとなく先に寝る気になれなかった。
ふと、今日の友廣さんとの会話思い出す。
「自宅でまでお仕事するの大変ですね。差し支えない範囲でいいんですが、今はどんなお仕事をされてるんですか?」
「うーん。そうだなあ。今はコンサルティングのような業務かな。お客様へ現状の問題の改善点とか提案したり」
私はキッチンを出て、成さんの向かいの席に静かに座る。
「へえ。それって、もちろん一社や二社じゃないですもんね。時間がいくらあっても足りなそうな……」
前に成さんは部署を代表する立場だと聞いた。だとすれば、やっぱり仕事も多岐に渡って量も多そうだもの。
成さんは指を動かしながら答える。
「確かに大変だけど、こうして信頼を築き上げていくのが一番だから。まあ、昔営業担当していた時とか、結局経過よりも結果を重視されて辛酸を嘗めたものだよ」
成さんにも、そういう時期があったんだ。勝手に生まれながらのエリートで失敗もしないイメージを作り上げていた。
なにもせずに今があるわけじゃないよね。彼も努力してここまできたんだ。
そう思うと余計に、彼が漏らした苦々しい過去が自分のことのように悔しくなる。
「結果が大事なのはわかります……でも、私はそこまでの経過も大切にしたいな」
だって、当時にうまくいかなくても、その経緯があって現在に繋がってるはず。
私がぽつりと零した言葉に、成さんは苦笑交じりに言った。
「梓みたいな人ばかりならいいんだけどね」
「じゃあ、家では私が成さんのこと見てますから」
私の理想論だとわかってる。
それでも、私には金融機関の世界は理解できなくたって、成さんという人に寄り添うことはできると思うから。
「頑張ってるところ、ちゃんと見てます」
そういう人がひとり近くにいたっていいじゃない。
私が図々しくもそう宣言すると、成さんは眉尻を下げて笑っていた。