身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 三日経ち、日曜日。
 私は成さんと一緒に出掛けていた。

 滅多に足を踏み入れない高級ブランドブティックで、私は成さんと向き合っていた。

「こっちとこっちなら、梓はどれがいいと思う?」
「う~ん……右……?」
「OK。ちょっと試着してくる」

 今日は成さんに誘われて、彼の服を見に来ていた。

 服、といっても私服ではなくどうやら正装用のスーツ。
 なにやら来週末にパーティーに呼ばれているらしい。

 仕事関係の人からの招待と説明されたはいいが、彼はその後驚くことを言った。

『婚約者として紹介できるし、パーティーに一緒に行かない?』と。

 私は驚倒してしばらく固まり、数秒後に断ってしまった。

 パーティー自体は父や伯父に言われて何度か経験はしていても、成さんの婚約者として立つとなれば話は別。申し訳ないけれど、まだそこまでの準備は整っていない。

 私が断っても、成さんは少し残念そうにしただけで無理強いはしなかった。

 ただ、『その代わり』と言って、パーティー後に食事をしに行こうと誘われた。
 さすがにそれは断る理由もないから、承諾したのだけれど。

「梓。どう?」

 奥から現れたのは、さながら英国風紳士。

 薄っすらとチェック模様が入ったブルーがかったスリーピースのスーツ。特徴的なドット柄のネクタイがアクセントに決まっていて、もはやモデル。

「うわあ……似合いますね」

 もうそのほかの感想なんてない。
 カッコいい人が上質なものを纏っているのだから、似合わないはずがない。

「本当? じゃあこれにする」

 成さんは私の言葉を受けた直後、あっさりと決めて買い物を終わらせていた。
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