身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 それから、少しぶらりとウインドウショッピングをして、成さんのセレクトで一軒のお店に入った。

 外観から店内まで可愛らしい造りの、オシャレで凝っているスイーツ店。

 私は雑誌で見たことがあっただけで、来たことはない。
 雑誌に取り上げられるくらいだから、やはり人気みたいで店内も賑わっていた。

「成さんすごいですね。こういうお店にも詳しいなんて」

 私はオーダーしていたパンケーキを頬張りながら、思わず感嘆の息を漏らした。

 成さんはコーヒーのみ。優雅にコーヒーカップを手に取って、ひとくち含む。
 静かにソーサーに戻した後、彼がぼそっと言った。

「いや。詳しくはない。実は梓が喜ぶかと思って調べておいた」
「えっ……」

 予想外の回答に、きゅんとする。照れくさくて、私は視線を店内に泳がせた。

 たまたま斜めの席に目が留まる。そのテーブルには、女性ふたりが向かい合って座っていて、奥のソファの女性は子供を抱っこしていた。

 わあ、可愛い。まだ一歳になるかならないかくらいかな? 周りから人の話し声がしてるのにぐっすり寝てる~。

 うっかり見入ってしまったら、成さんが私の視線の先に気づいた。

「子供?」
「あ、はい。あの寝顔めちゃくちゃ可愛い~」

 身近に小さい子供がいないから、余計にめずらしくてついつい見てしまう。
 あの安心しきった寝顔が堪らない。

「癒されますね。けど、子育てって大変なんでしょうね」

 小さければ小さいほど、極力離れられないんだろうし、こういう場所もひとりでゆっくりできないんだなあ。

「梓は子供ほしい?」

 ふいに投げかけられた質問にぽかんとする。
 次第に、なんだか将来の話をされている錯覚に陥って、気恥ずかしくなる。

「そ、そうですね。大変と思っていても……やっぱり、授かれるならほしいかな」

 私はごまかすように俯いて、パンケーキにナイフを入れた。
 すると、成さんがくすっと笑いを零す。

「ごめん。想像したらつい」

 茫然としていたら、彼はにっこりと口角を上げて言った。

「梓に似て、可愛いんだろうなあって」

 その言葉に、危うく手に持っていたカトラリーを落とすところだった。

 成さんの真意は読めないけれど、とにかく終始こそばゆくて、私は黙々とパンケーキを平らげた。
< 110 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop