身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 夜になり、自宅に戻ってソファでひと息ついていたら、成さんがショッパーをひとつ差し出してきた。
 それは、成さんのスーツを購入したブランド店のもの。

「え?」

 私は戸惑いつつも、手を引っ込めない成さんを窺って、おずおずと受け取った。
 なんだろう?と考えを巡らせていると、成さんが隣に座る。

「あの、これは?」
「プレゼント」
「え! どういうことですか?」

 別に特別な日でもなんでもないのに?

 困惑しながらも、成さんが待っている様子だったため、ゆっくり中身を確認する。
 包を広げると、上品なデザインの洋服が入っていた。

「似合うと思って選んだんだけど、どう?」
「いつの間に……」
「店内見て回った時に、インスピレーション感じて。もしよかったら、来週それでデートしよう。梓、うちに荷物あまり持ってきてないだろう? 取りに戻るのも大変かなと思って」

 成さんって、本当になにからなにまでスマートすぎる。非の打ちどころがなさすぎて、時々自分と比べちゃう。

「あ……気に入らなかった? ごめん。勝手に選んで。驚かせたくて」
「いえ。気に入りました。ありがとうございます。だけど……私、なにも返せない」

 色々としてくれるのはうれしい。しかし、あまりに多くをもらいすぎると、申し訳ない思いが大きくなっていく。

 素直に喜べず困っていると、成さんが私の肩を抱き寄せた。

「貸し借りじゃないでしょ。男が好きな女性に贈りものをしたいって思うのは普通のことなの。喜んだ顔が見れたら、それで満足するんだよ」
「そういうものですか……?」

 成さんは口角を上げ、私の旋毛にキスを落として「うん」とひとこと答えた。
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