身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 一週間後。

 時刻は午後六時。
 成さんはすでに予定通り、融資先の新社長の就任パーティーに行っている。

 五時から開催されるから七時頃に待ち合わせよう、と言われている。
 私は少し早めに家を出て、待ち合わせ場所であるパーティー会場のホテルへと移動した。

 東京駅からすぐそばのホテルリリシア。
 都内のラグジュアリーホテルの中でも有名なところ。

 一度だけ、父の付き合いで同行したことがある。会場の雰囲気もよく、料理も美味しくかった。

 私はロビーのソファに座って成さんからの連絡を待つ。
 腕時計に目を落とす。あと十五分ほどで約束の七時だ。

 すぐそばにある、二メートル以上の大きな窓ガラスに映る自分を見る。

 プリーツが綺麗な落ち着いたマスタード色のラグランワンピース。
 上品でいて可愛く、さらにはやはり世界的ブランド店のものだからか、生地がとても着心地がよくてすごく気に入った。

 まだ成さんにはワンピースを着た姿を見せていない。
 どんな反応をしてくれるか、ドキドキしてる。

 窓を見上げて外の景色を眺めていたら、バッグの中のスマホが振動した。

「もしもし」
《梓? もしかして、もう着いてる?》
「はい、ロビーに。あ、でもまだかかるようなら、私のことは気にせず」
《いや。すぐ行くから。待ってて》

 通話を切って、ソファから立ち上がる。

 たぶん、エレベーターホールのほうから来るかな。

 そわそわとしながら待つこと数分。十数メートル先に彼の姿を見つけて歩み寄った。

「梓」
「鷹藤さん!」

 私が返答しようとした矢先、別の誰かが成さんに声をかけた。
 視線を成さんの奥へ向けると、同じ世代くらいの男性がにこやかにやってきた。
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