身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「はい? なにを言って……」
「だって、彼すごく条件がいいんだもの。肩書きや将来性はもちろん、顔もいいし。条件に適ってるのよね」
「条件って……」

 呆気に取られる私をよそに、夕花さんはサイドの髪を人差し指にくるくる巻きつけながら堂々と言って退ける。

「親に結婚相手に条件をつけられるのなら、その範疇で自分好みの人を選んだ方がマシじゃない? なかなかいい人がいなかったのよね」

 私は唖然としてなにも返せなかった。
 瞬きもせず彼女を見つめていたら、きょとんとした顔で言われる。

「あなただって同じじゃないの? 肩書きと顔を見てお見合いに行ったでしょう?」
「わ、私は違います! それに今一緒にいるのは彼を好きだから……」

 あまりに思想が違っていて驚愕した。

 懸命に否定をしたら、夕花さんは長い睫毛を瞬かせ、笑い始める。
 可笑しそうに目を細めて、ニコッと口元を弓なりにする。

「まあ。そうなの? めずらしい方ね」
「紀成さんこそ……」

 人に対して『譲って』とか……普通はそういうことを言わない。

 彼女とは根本的に考え方が違うと察し、線を引いた。
 しかし、彼女は彼女なりにポリシーがあるのだろう。まったく引かずに話を続ける。

「あなたはそうでも、果たして鷹藤様もそうかしら? お見合いする人なんて、初めから相手に求めてるものは愛情よりも資産じゃない? 好きも嫌いもないと思うわ。あなたが稀有なのよ」

 夕花さんの指摘に返す言葉がなかった。
 彼女の言い分は、認めたくはなくても否定できない。

「今、結婚相談所とかマッチングアプリとかあるじゃない。あれも、結局のところ相手の情報で選んで、目的は〝結婚すること〟でしょう。まあ、私は効率的でいいと思うのよね」

 ――そう。そもそも私が代わりにお見合いに行ったのも、伯父たちは鷹藤家と時雨家の結びつきを強固する目的のためなわけで……。

 当然、聡明な成さんのこと。初めはそれを承知で、あの席に出向いたはず。
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