身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「すごく美味しかったです。お腹がいっぱいなのにデザートも全部食べちゃいました」
「うん。ずっと美味しそうに食べてたね。連れてきてよかった」

 今さら、もう少し恥じらって食事をするべきだったかと頭を過った。
 それこそ、女子代表みたいな稲垣さんならそうしていただろう。

 まあ、もう食事が終わったのだから考えても仕方がないかな。

 開き直ってテーブルナプキンを畳んでいたら、正面から視線を感じて目を向けた。
 成さんはさっきまで和やかな雰囲気だったのに、どこか緊張感が漂う。

「梓、今日は渡したいものがあるんだ」

 凛とした表情で言われ、背筋が伸びた。
 心臓が大きく跳ねた直後、彼はテーブル上にすっと手を置いた。

「梓、俺と結婚してください」

 そう言って成さんがゆっくり手を戻すと、隠されていたものの正体が明らかになる。

 手のひらサイズの四角い箱。
 ふたは開いていて、中身は……エタニティリング。

 私は外の夜景に負けず劣らず輝きを放つ指輪に圧倒されて、しばらく固まっていた。

「展開が早すぎて戸惑うかもしれないけど、俺たちはお見合いだからすぐに結婚してもおかしくはないし」

 成さんは単に、驚いている私を落ち着かせるためにフォローをしてくれただけ。
 けれども、今日の流れで『お見合い』を引き合いに出されると、否が応でも思い出す。

 ――『結局のところ相手の情報で選んで、目的は〝結婚すること〟でしょう』

 夕花さんの重みのある言葉を。
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