身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 マンションに着き、バスタブにお湯を張って戻ろうとしたら、成さんがやってきた。

「成さん?」

 突然現れたかと思ったら、後ろから抱きしめられて混乱する。

「今日は柄にもなく緊張して、ちょっと飲みすぎたみたい」
「えっ。大丈夫ですか? ベッドで休みます?」
「お湯が溜まるまでそうしようかな」

 成さんは自分で歩けるようでほっとしつつ、ベッドルームまで付き添った。
 成さんがベッドの脇に腰を掛けたのを見て、くるりと踵を返す。

「待っててください。今、水を……」

 すると、手を掴まれて後ろに引っ張られた。

「きゃっ」

 反射で閉じた目をゆっくり開いていくと、成さんの上に私が乗っかっている体勢になっていた。
 まるで彼を押し倒したみたいで、私は慌てて上半身を離した。

 ――刹那、後頭部を囚われて唇を奪われる。

「んっ」

 成さんとのキスは、まだ少しワインの味が残ってる。
 徐々に力が抜けていく私の唇を割って蹂躙されると、頭の奥がぼうっとしてきてなにも考えられない。

「梓……」

 これまでにないくらい色気のある声で囁かれ、背中が粟立つ。
 彼の指がつっと唇を撫でるだけで、私はきゅっと目を瞑り小さく声を漏らした。

「可愛い」

 耳に直接吹き込まれ、潤んだ瞳で成さんを見下ろす。

 成さんは、私の髪を掬って口づけ、熱に満ちた視線を向けてきた。

「俺、今まで自分に子供ができて奥さんと家族で過ごすってイメージが曖昧だったけど、梓と出逢ってからすごくその未来が待ち遠しい」
「な、成さ……っ」
「梓に似た子供……俺と梓の……いいな」

 ゆったりした口調と同じく、やおら私の身体に触れ、無数のキスを落としていく。

「あっ……成さ、ん……っ、あぁ」

 我慢しても自分の口から次々と零れ落ちていく甘ったるい声に羞恥心を抱く。
 ……が、どうしようもない甘美な刺激に、容易く溺れていく。

 いつの間にか、私が下になって彼を仰ぎ見ていた。

「ああでも、梓との時間も捨てがたい」

 成さんは妖艶な瞳に私を映し出して、内に秘めていた激情のままに私を抱いて話さなかった。
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