身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 昨日の夜は、お酒のせいもあったのか、成さんがちょっと強引で甘くて……言われた言葉や触れられた感触など、ずっと色濃く残ってた。
 
ふわふわした気持ちを戒めてなんとか仕事を終えた私は、帰宅してから部屋でひとり、ケースに入った指輪を眺めていた。

 真ん中のダイヤモンドの周りが小さなダイヤモンドで囲われたヘイローリング。
 元々中央のダイヤモンドが大粒だから、いっそう大きく見える。クラシカルなデザインが素敵。

 こんな高価なものを……。私、ちゃんと成さんに相応な妻になれるかな。

 お見合いを否定するわけではない。だけど私たちの場合、そもそも相手が私じゃなく友恵ちゃんだったのもあって、心の隅にずっと引っかかってるものがある。

 指輪を見つめ、これまでのことを回想する。

 初めは成さんを疑っていた。
 次第に心が揺らいでいって、彼の情熱的な言葉に考えをひっくり返された。惹かれずにいられなかった。

 今日までの経緯を頭に浮かべたら、もう彼の気持ちは疑えない。
 なにより、信じたいって自分が思ってる。私の願望だ。
 それでも夕花さんの持論に押し負けてしまったのは……自分に自信がないから。

 逃げずに自分の気持ちを突き詰めていき、たどり着いた答えに納得する。

 玄関のほうから鍵が開く音がした。
 私は指輪をしまって、部屋を出る。

「お疲れ様です。思ったより早かったんですね」

 急な仕事がひとつ入ったって連絡がきたから、てっきり緊急でもっと長引くかと思っていた。

 成さんは靴を脱いで一笑した。

「うん。梓が家で待ってると思ったらね」
「えっ。す、すみません」
「違う。気になったわけじゃなくて、会いたくて」

 疲れているはずなのに、そういうところを微塵も感じさせず、柔らかく笑む彼にドキリとする。
 私はどぎまぎしながら、成さんの後をついていく。
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