身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 ――夜。

 成さんと夕食を終え、お風呂を済ませた後に、私は自然を装って切り出した。

「実は今日、オフィスに紀成剛士さんがいらして……ご挨拶しましたよ」

 ソファで寛ぐ成さんを敢えて見ずに、さらりと続ける。

「前にお会いした時、マチラモバイルにいらっしゃると聞いてすぐ、もしかしたらって思ってはいたんですけどね。びっくりしました」

 わざわざ報告することでもないとは思いつつ、でも隠すことでもないと思い、悩みに悩んで成さんに伝えた。

 本当は、その先に続く話もあるけれど……。

 ううん。あれは、剛士さんの質の悪い冗談かもしれないし。
 ……っていうか、あんな出来事、そう簡単に言い出せないよ。

 内心モヤモヤとしていたら、成さんは本を読む手を止め、眼鏡を外して呟いた。

「紀成さんと……? そう」

 成さんの反応がなにか含みを持っているものに思えて、自分が不自然だったのかと慌てる。
 すると、私の不安をよそに成さんが重そうに口を開いた。

「ごめん。言おうか迷ったんだけど、余計な心配させたくないからやっぱり言うよ。最近よく夕花さんから連絡がくるんだ」

 私は彼の告白に目を丸くする。

 驚いた理由は、夕花さんからの頻繁な連絡の事実ではなく、包み隠さず私に報告してくれた成さんの行動に。
< 131 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop