身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「好意は持ってくれているってわかってても、それがどういった種のものかまではわからないから、安易に退けることもできない状態で」

 成さんは憂慮している様子で額を押さえている。

「そう……ですか」

 正直、私は反応に困ってしまった。

 夕花さんが行動的になっているのも楽観視できないけれど、今日はそれよりも自身が抱えている秘密をどうするか……。

 成さんは私を気遣って現状を教えてくれた。
 だったら、私も同じように伝えたほうがいい……はず。

 でもいざ、言っても言わなくても嫌な思いをさせると思うと、なかなかスマートに切り出せない。

 気付けばすぐ後ろに成さんが立っていて、しなやかな腕が絡みついて抱き留められていた。

「梓」

 旋毛に鼻先を埋められて名前を呼ばれたら、心拍数が急激に上がって全身が熱くなる。

 微動だにせずに立っていると、成さんは回していた腕にぎゅうっと力を込めた。

「彼女の会社とは繋がりがあるだけに、また会う可能性は否定できない。でも、なにもないから。それだけは覚えていて」

 頬にキスが落ちてきた途端、頭の中が真っ白になった。
 首を回して彼を見上げると、今度は唇に触れられる。

 彼のキスはいつも私の思考を埋め尽くしてしまう。

 結局私は流されるまま、剛士さんのことも言い出すタイミングを逃し、言えずじまいだった。
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