身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 翌日は金曜日。夜は友恵ちゃんと約束をしていた。

 私が仕事を終える時間に合わせ、丸の内で待ち合わせをした。
 それから、予約していたレストランに向かう。

 個室に入った私たちは、オーダーを済ませた後、サーブされたグラスを軽くぶつけ合った。

「改めて、お仕事お疲れ様、梓ちゃん」
「ありがと。友恵ちゃんはあれからどうしてたの? ほら……彼の件とかも」

 私はドリンクに口を付ける前に、早々と聞きたいことを尋ねた。

 だって、やっぱり気になる。

 すると、友恵ちゃんはくりっとした瞳を私に向け、ニコリと笑った。

「うん。実は……お父さんに認めてもらえたの」
「えっ! 嘘! 本当に!?」

 思いがけない朗報に、行儀が悪いとわかっていても大きな声を出してしまった。

 特に財閥の跡取りなどでもない友恵ちゃんの彼が、伯父にすんなり認められたのは意外だったから。

「彼、最近ついに賞を獲ったの。その影響が大きかったと思うわ」
「賞? それはすごいわ。おめでとう! でもなるほどね」

 友恵ちゃんから理由を聞いて納得する。

 それに、時雨のメインは出版社。だったら、大きな功績を残した彼への印象はぐんとよくなるだろし。

 丸く収まってよかった、と口元を綻ばせていたら、友恵ちゃんが苦笑する。

「本当はそういう肩書きだけじゃなくて、彼自身を見て認めてほしかったけど……それはこれから時間をかけてわかってもらえたらいいのかなって。建前よりも、やっぱり一緒にいられるのが一番だから」

 伯父に認めてもらえたという事実に喜んで、友恵ちゃんの気持ちを汲み取れていなかった。

 確かに、賞を獲ったからという理由だけで認めてもらってもうれしくない。
 落ち着いて考えれば、それは今の私と重なっていて知らず知らず呟いていた。

「肩書きじゃなく、認めてほしい……かあ」
「どうしたの? なにかあった?」

 友恵ちゃんが首を傾げる。私は窓の外に目を向けて、失笑しながら答えた。
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