身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「私、分家とはいえ時雨家の一員で、そのおかげで友恵ちゃんの代わりとして白羽の矢が立って、成さんと知り合えた……。時雨じゃなかったら、今彼と一緒にはいなかったんだなあって、つくづく思っちゃって」

 資産や権力を使って得たものではない。
 とはいえ、考えすぎてしまっている私には、どうも割り切れないでいた。

「なんか、そう考えだしたら、〝時雨〟であること以外に私に魅力なんてあるのかなって」
「あるよ! しっかりしてるし努力家だし! 約束は絶対に守るし、いつも相手を慮って、すごく優しいもん!」

 私のぼやきに、友恵ちゃんは食い気味で否定した。
 私が目を瞬かせていると、友恵ちゃんは間を置いて再び口を開く。

「鷹藤さんだって、そういうところに惹かれたはずだよ」

 真剣な面持ちでそう言ってくれて、素直にうれしかった。

 でも、友恵ちゃんは私と過ごしてきた時間が長いから。
 私をよく知る彼女だから言える言葉であって、出逢ってたったひと月の成さんが同じように思ってくれてるとは考えにくい。

 私も成さんくらい、わかりやすく魅力満載ならなにも悩まないんだろうけれど。

「そうだといいね」

 私は必死にフォローをしてくれる友恵ちゃんに笑いかける。

「――梓ちゃん」
「うん?」
「……ううん。ごめん。なんでもない」

 神妙な表情で口を噤む友恵ちゃんに、私は明るく振る舞った。

「こっちこそごめんね。せっかくいい話聞けたのに雰囲気悪くして。あ、お料理来たみたいだよ」

 ちょうどノックの音が割り込んできて、スタッフがオーダーしていた料理を運んできた。

 それをきっかけに話題をすっかり変えて、自分の現状を考えないようにして過ごした。
< 134 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop