身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「時雨さんて、凛としてるかと思えばそんな緩んだ顔もするんだ。可愛いな」

 目を細めて言われ、フリーズした。

 か、可愛いって……。

 制御できずについ照れてしまう。
 瞬く間にカァッと顔が熱くなるのを感じ、とてもじゃないけど目を合わせられない。

「確か倉庫に余ってたはずだから今度持ってくるよ」
「えっ、い、いいんですか?」

 羞恥心も、もちマロには敵わなくて思わず顔を上げた。
 剛士さんはこれまで以上に楽しそうに眉尻を下げて笑ってる。

「はは。本当に好きなんだね。大丈夫だよ」

 私ははっと我に返り、冷静になって遠慮した。

「あ、ず、図々しかったですね。すみません、やっぱり遠慮します。お気持ちだけで。では、私戻りますので」

 私はペコッと頭を下げて、すぐそこのエレベーターホールへ足を向けた。

 いくら好きなものを前にしたせいとはいえ、知り合って間もない取引先の人に馴れ馴れしい態度を取ってしまった。

 それに、冗談でも『次は僕とお見合いしませんか』だなんて言われた人と、あまり親しくなるのも控えたほうがいい気がする。

 ボタンに指を伸ばしたときに、肩を掴まれる。

「待って」
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