身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
すると、前方の曲がり角から人の気配がした。
いち早く反応したのは剛士さんだ。
咄嗟に私の手を引っ張り、今来た道を引き返し、エレベーターホールに身を潜める。
どうしたんだろうと、尋ねてみようとした刹那。
「ふたりだ」
彼のひとことにドキリとする。
やっぱりふたりきりなんだ。
経緯は今わからないけれど、とにかく今は現状から切り抜けたい。
距離的にそう遠くはない。ここはエレベーターがあるのだから、ふたりは必然的にここへやってくるはず。
私は焦りを滲ませながら、掴まれている右手に視線を落とした。
この状況こそ、成さんにでも見られたら勘違いされる――。
一度隙を見て手を振り解き、踵を返してエレベーターへつま先を向けた。
しかし、すぐにまた腕を掴まれて阻まれた。
「紀成さ……っ」
「しっ。なにか話してる」
私は剛士さんにいなされ、口を噤んだ。
見なきゃいいものを、心とは裏腹に目は話し声のほうへ向いてしまう。
視界に映るのは、確かに成さんと夕花さん。
夕花さんの手には……ルームキー?
ギクリとした矢先、夕花さんが成さんの首に腕を巻き付けた。
それから、流れるように彼へ唇を寄せる。
さすがに顔を背け、渾身の力で紀成さんの手から抜け出すと、私はエレベーターのボタンを押した。
幸運にもエレベーターは待機していて、私は一目散に乗り込む。
扉が閉まり切る前に、剛士さんが滑り込みで乗ってきた。
エレベーターが下降し始めた後、剛士さんが口を開いた。
「いや、びっくりした……」
私は彼の顔を見る気にもなれず、エレベーターの扉だけを見ていたけれど、彼の声色から本当に度肝を抜かれていたようだった。
いち早く反応したのは剛士さんだ。
咄嗟に私の手を引っ張り、今来た道を引き返し、エレベーターホールに身を潜める。
どうしたんだろうと、尋ねてみようとした刹那。
「ふたりだ」
彼のひとことにドキリとする。
やっぱりふたりきりなんだ。
経緯は今わからないけれど、とにかく今は現状から切り抜けたい。
距離的にそう遠くはない。ここはエレベーターがあるのだから、ふたりは必然的にここへやってくるはず。
私は焦りを滲ませながら、掴まれている右手に視線を落とした。
この状況こそ、成さんにでも見られたら勘違いされる――。
一度隙を見て手を振り解き、踵を返してエレベーターへつま先を向けた。
しかし、すぐにまた腕を掴まれて阻まれた。
「紀成さ……っ」
「しっ。なにか話してる」
私は剛士さんにいなされ、口を噤んだ。
見なきゃいいものを、心とは裏腹に目は話し声のほうへ向いてしまう。
視界に映るのは、確かに成さんと夕花さん。
夕花さんの手には……ルームキー?
ギクリとした矢先、夕花さんが成さんの首に腕を巻き付けた。
それから、流れるように彼へ唇を寄せる。
さすがに顔を背け、渾身の力で紀成さんの手から抜け出すと、私はエレベーターのボタンを押した。
幸運にもエレベーターは待機していて、私は一目散に乗り込む。
扉が閉まり切る前に、剛士さんが滑り込みで乗ってきた。
エレベーターが下降し始めた後、剛士さんが口を開いた。
「いや、びっくりした……」
私は彼の顔を見る気にもなれず、エレベーターの扉だけを見ていたけれど、彼の声色から本当に度肝を抜かれていたようだった。