身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「ねえ。もしかして、前から彼に言い寄られてた?」

 ギクッと肩を揺らし、目を落とした。

 本当は初めてオフィスで剛士さんと会った日に伝えようかと思っていた。
 でも、タイミングを逃したからと、言わない判断を下したのは私。

「ご……ごめんなさい」

 剛士さんへは、やましい言動をしたり気持ちが揺らいだりは一切ない。
 それでも、やっぱり成さんをまっすぐ見るには勇気が必要で、なかなか顔を上げられない。

「なにに対して? 話さなかったこと? 彼に触れられたこと?」

 成さんの手が熱い。視線が痛い。
 私は手のひらにじわりと汗を握る。

「それとも、彼に惹かれたとか?」

 続けて質問された言葉に、私は迷わず首を横に振った。すると、グイッと手を引っ張られ、バランスを崩した私は前傾姿勢で成さんに覆いかぶさった。

 慌てて身体を離そうにも、成さんは今度私の腰に手を置いて拘束する。

 さっきよりもずっと顔が近い。
 成さんの深い色をした瞳に捕まって、身動きできない。

 彼はかたちのいい唇をゆっくり開く。

「本当に? あの人が現れたから、俺のプロポーズを受け入れられないんじゃないの」

 突拍子もない意見を突きつけられ、私は目を見開いた。
 成さんは私の左手を取り、指を絡ませてそこへ視線を落とす。

「指輪もあれから一度もしてくれてないし」
「そ、それは……ん、むっ」

 ふいに唇を塞がれて動揺する。

 息継ぎすら許さないと言わんばかりの激しいキスにくらくらする。

 成さんはいつしか私の背中と後頭部に手を回し、いっそう私の動きを制限していた。

「はぁ……待っ……ンッ」
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