身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 一瞬の隙を見て言葉を出そうとするも、機会は与えられずに唇で押さえつけられる。

 舌を絡め取られ、息が上がり、薄っすらと涙が浮かんでくる。
 完全に力が抜け落ち、弱々しく彼のスーツを掴んでいたら、やっとキスが止んだ。

 肩で息をして潤んだ視界にぼんやり成さんを入れると、彼は悔しそうに、悲しそうに眉を寄せて零した。

「あと何回口づけたら、梓の心は俺でいっぱいになるの?」

 彼の瞳と声に、自分がどれほど彼を傷つけていたのかを思い知る。

 きっと、剛士さん云々ではなくて、プロポーズをすぐに受け入れなかったことや、指輪をずっとしまい込んでいたことで傷つけた。

「ねえ。教えてよ――梓」
「あっ、んぅ……」

 成さんは私をソファに押し倒して、再びキスで今の繊細な気持ちをぶつけてくる。

 成さんのポケットから着信音が鳴り始めた。

 私は一瞬、思考がそっちに向きかけたけど、成さんはまるで一切聞こえていないみたいにキスに……私にだけ集中している。

 もう何度繰り返しただろうか。

 いつしか着信音も途絶え、しんと静まり返ったリビングで互いに浅い呼吸を響かせる。

 憂いげに睫毛を伏せる成さんに、私はそっと指先を伸ばす。
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