身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「実は……私が今日、成さんからのお誘いを受けた理由は、確認したいことがあったからなんです」
「はい。なんでしょうか」

 意を決して切り出した話題だ。
 なのに、成さんはニコニコ顔で返してくるものだから、調子が狂う。

 私は「んんっ」と咳払いをして真面目に答えた。

「ええと、まず先日もお話した通り、このお見合い話は本来私にいただいたものではないので、成さんも直前に本来の相手がいなくなって驚かれましたよね?」
「んー。まあ、失踪されたっていうのは驚きましたね」
「しかも、都合よく今度は私がお見合いをするとなって、不快になりましたよね。本当に申し訳ありません」

 すると、彼は目をぱちくりとさせ、手を顎に添えて首を捻る。

「いえ。そこまで驚きもしませんでしたし、不快になどは決して……。梓さんと知り合えてよかったと思っていますから」
「はっ……?」
「そうでなきゃ、連絡先を交換してまでこうして誘ったりしません」

 彼の好意的な言動に翻弄される。
 柔らかい眼差しのままだけど、その瞳からは真剣さも伝わってくる。

 ことごとく当初の予定と違う方向へいっている現実に戸惑いを隠せず、言葉を失った、そのとき。

「時雨梓さん。僕と結婚を前提に付き合ってください」

 成さんが今までにないほど真摯な姿勢で、はっきりと言った。
 いよいよ私もなにが起こっているのかわからなくなり、絶句する。

 彼はその間、一度たりとも目を逸らさず、まっすぐに私を見つめている。

 耐え切れくなったのは私のほうで、ふいっと顔を背けてしまった。
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