身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「この間と今日の僕の印象はどうでしたか? 正直に言ってくださって構いません」

 改めてよく見ると、成さんってとても綺麗な目をしている。
 私は煌く宝石にほだされ、ぽつりとつぶやいた。

「こ……好印象……でした」

 瞬間、彼はぱっと笑顔を咲かせる。

「よかった。だったら可能性はありますよね?」
「え? うーん……」

 この期に及んでまだ言い淀んでいたら、成さんは私の顔を覗き込む。

「では期限を設けませんか。三か月。その間は立場や互いの背景など忘れて、個と個の付き合いをしてみましょう」
「えっと、あの」
「お試し期間ということで。僕を知ってください」

 端正な顔をさらに近づけられて、私は堪らず目を逸らした。
 しかし、なお彼の視線が向けられているのを感じ、勢いで返答する。

「わ……わかりましたっ」
「本当? ありがとうございます」

 満足げに口元を緩めて適正な距離に戻った彼を一瞥し、完全にペースにのまれた、と落胆する。

 お見合いの日も思ったけど、成さんって温和な人柄なのに意外に意見を押し通す。
 それがまた威圧的じゃないから、こっちもつい押し切られがち。

 なんていうか、うまく誘導されている感じだ。
 なによりも、私は今までこうもグイグイと好意を伝えられた経験がない。
 だから、過剰にどぎまぎしてしまって、毅然と突き放せなかったのだと思う。

 やっぱり、どういった経緯であっても魅力的な人に好意を持たれたら、素直にうれしくなるのが世の常らしい。
 自分も思いのほか単純な女だったのだと恥ずかしくなった。

 とはいえ、今回の件はあまり突き放しすぎたら、伯父や父が困る結果になるかもしれないし……。
 彼の提示した条件を受け入れたのも、案外間違いじゃないのでは。

「さ、三か月……ですよね?」
「はい。とりあえず。細かな部分は追々ふたりで話し合いましょう」

 とりあえず、ちゃんと知ったうえで断ればいいんだよね?

 三か月も要らないと思うけど、それは途中で話し合えばどうにかなるはず。
 ひと月も付き合えば、適当な理由をつけて断ったって納得してもらえるよ。いや、たぶん彼のほうから断ってくる予感さえする。

 状況を整理して、ゆっくりと顔を戻して成さんと向き合った。
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